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日々の皿

2月22日(月)の食卓/男らしいチーズケーキ  くもりのち雨

2月22日(月)の食卓/男らしいチーズケーキ  くもりのち雨_c0367403_13494721.jpg

たまご






「もうね、しわくちゃなの。どうしたらいいと思う?頸なん

て鶏みたいにだらーんとなっちゃってね、それでも夕べは寝

る前に、人参をすりおろした蜂蜜を塗ったからまだましにな

ったけど」母の頸が人参のオレンジ色にべたべたに染まって

いるのを思い浮かべながら、風邪で寝込んでいても、美容を

気にかけてそれが母の底力だし、すごいことだと感心する。

母は髪をとかしたり、お化粧をなおしたりしたあと、右の顎

と頬を包むように手のひらをあてて、鏡のなかのじぶんに微

笑む癖があるけれど、今はどんな顔で向かっているんだろう。

「よく眠って、上質な油をすこし摂るといいと思う。松の実

粥も滋養になっていいけれど、面倒だったらそのままポリポ

リ食べてね。それから、あんまりピチピチでもそれはそれで

問題だから、大丈夫」と慰めると「いやねえ」と言った。

それにしても、はちみつを塗った頸はべたべたして気持ち悪

そうだなあ。

今日はいったい何人くるのかわからなくて、チーズケーキの

大きいのを焼きながら走り回っていたら、焦げた匂いが漂っ

てきて「あ」と台所に走ってオーブンを開けると、うっすら

煙が流れ出した。やってしまった。

チーズケーキは出せないと見せると「男らしくていいじゃな

い」と笑うので、焦げの少ないところを切って差し出すと「

個性的な味」と言って自分で切り分けて仕事が終わった男の

人たちに、男らしいチーズケーキを差し出した。


夕方、中古カメラ市で待ち合わせて、気になっていた銀座の

外れの昔ながらの街の中華屋さんに行く。とろみの中華そば

が食べたくて。

開店して間もない時間に入ると、テレビを見上げていたお店

の人たちが振り返る。

いい感じだ。

入口近くの席に座る。たくやさんは五目焼きそば、わたしは

とろみの広東そば、それから餃子を一枚注文する。

入口の本立てにはサンデー、ジャンプ、マガジンの三誌、床

にはおかもちがいくつか並んで出前もしているらしい。各テ

ーブルには灰皿が用意されて全面喫煙可、金文字の店名がガ

ラス扉に貼られて、その文字越しに傘をさす人がちらほらす

る雨が落ちてきた銀座を眺めながら待つ。

運ばれてきた広東麺は、きちんと刻まれた野菜のあんかけに

お決まりの海老とうずら玉子が一つずつのっている。

うずらの玉子の黄身は、生臭くどろりとしてどちらかといえ

ば苦手な味だけれど、街場の中華そばにおいての画竜点睛、

これがなければ決まらない、というところ。味に特徴はない

けれど、こういうのが食べたかったのだ。

テーブルの上に6本のフィルムを並べ、夢想する。

中古カメラ市の福引きで当たった三等の一万円券は、映画用の

フィルムを写真用のパトローネに詰め替えたISO800タングステ

ン、一本1800円の三十五ミリフィルムにあてた。

写真が好きでたまらなそうなカメラ屋のスタッフのひとりは、

昼間はISO500に合わせて撮るとブルーが強調されてそれも

い、と言って彼が撮った渋谷のスナップ写真2枚をくれた。

もう一人は、夜の街を撮るとすごくきれいに映ったと言った。

本の写真を見せてもらったけれど、ほんとに映画のワンシー

みたいな雰囲気だった。

ひとコマひとコマに映像がおさまった未来の像を想像してフィ

ルムを眺め続ける。

どこかへ行きたい気持ちが、久しぶりに沸き上がってくる。

このフィルムをカメラに詰めてどこへ向かおう。




----朝のごはん----

いそべ巻きと豚汁


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男らしいチーズケーキ

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----夕方のごはん----

創業70年の銀座のはずれの中華屋さんで

五目焼きそば、広東麺、餃子一枚


----夜のおやつ----


焦げたケーキとカフェオレ

Cine Still Filmを眺めて夢想の時間。




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by hibinosara | 2016-02-28 11:05 | Comments(0)