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日々の皿

丑年へ向かう街





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12月28日(月)  くもり  14/7℃


「アンリ・ジャイエだよ。見てごらん」

テレビ画面を覗きにゆくと、ワインだった。

なんとかバラントールがなんとかだ、とか、言っている。


「ね。ワインってなあに?」

「そうだなあ。ロマンだろうなあ」

「ヒストリー?」

「それもある」


ロマンかあ。

ならばわたしは気球で旅をしてみたい。

ヒゲの人と猫も一緒で、なんとかバラントールも乗っていたらい

いなあ。よい香りの珈琲と薪火焼きの日持ちのするパンを持って

、豚ももの生ハムは気球にぶら下げて。


あれはラッタターかな?とヒゲの人がつぶやく。

窓の一段高いところに上がってこっちをじっと見ている瞳はオニ

キスのように黒くくりくりしているし、脳みそがいっぱい詰まっ

ていそうなよく張った、丸いハチを持っているから多分そう。

ラッタターは、艶々のおかっぱの髪が揺れる利発な男の子みたい

な雰囲のある雀なのだ。

わたしたちが餌皿のある方の窓に移動すると、ついてくる。

窓を開けてやるとすぐに飛び込んできた。

「おはよう」

ヒゲの人は腰に手をやってラッッタターを眺めながら「おかしな

やつだなあ」と言った。



お昼は京橋の洋食屋。

ずらりと行列。

迷ったけれど年末だから並んだ。

先代は誰かと深いお辞儀を繰り返して紙袋を受け取っている。こ

のところ、年末の深いお辞儀を街のあちこちで見かけるようにな

った。

レジを担当していた先代は倒れたのか足を引きずって、エレベー

ターへの短い階段をゆっくりとのぼり、最後の段でふらっ、とし

た。

今日は厨房の見える席で、面白かった。



取引先に行ったヒゲの人を待つ間、本屋でブラブラした。

こんな無目的な時間が前はもっとあったけれど、久しぶり。

待ち合わせをしてタルト・タタンを食べに行って、手を洗う石鹸

を買って、家の中は大掃除でぐちゃぐちゃだけれど、今の時間は

ゆったりしている。

東京駅の前を通ると、月が昇り始めていた。

ライトアップされた東京駅を背に結婚式の写真を撮っているカッ

プルが三組もいる。

新婦はみんな肩を大きく出した白いウェディングドレスを着て寒

そう。

空かないお腹にカレー蕎麦を詰めこんで、気持ち悪くすすってい

る間に、銀行にいく用事を思い出して、ずんずん吸い込む。うす

暗い道を走るように歩いてみずほ銀行本店に飛び込んで用事を済

ませたその帰り、ヒゲの人にメジロが死んでいた空っぽなコンク

リートを見せに行く。




―――――――28日のごはん




朝の三点セット


昼は

いろいろ売り切れていて、二人とも豚肉とインゲン豆の煮込み

にした、食後にエスプレッソ。

トマト味が強くなっていた。

前の方がおいしかったとか、私たちは勝手なことを言う。


おやつ

タルトタタンとエスプレッソ



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蕎麦屋で

ヒゲの人辛味そば

わたし カレー蕎麦













by hibinosara | 2021-01-13 10:16 | Comments(0)