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日々の皿

こうちゃんとともちゃん






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10月26日(水)  晴れ  19/10℃


たまごチャーハンを食べながら、ニュースを見た。

気になるのは顎ばかり。

肉のつき具合、形、大きさ、頭部とのバランス、首へのつらな

り。理想の顎のラインを持っているアナウンサーがいて、目鼻

口のバランスは素晴らしいのに大きすぎる顎を持っているアナ

ウンサーがいた。一回り小さければずいぶん印象が違うだろう

と、失礼な目で見ていたけれど、でもみんなが卵型の整った輪

郭を持っていたら個性っていうものがなくなって、気持ち悪い

だろう。

参考にできるような、頬はパンパンに張っているけれど顎だけ

すんなりした人は見かけない。朝からパソコンに向かって顎を

直していた。ダメ出し二度目。


こうちゃんとともちゃんが母を芸術の森に連れて行ってくれた。

スマートフォンが連続して震えると、こうちゃんだ。ラインに

写真がじゃんじゃん送られてくる。

母は美術館の展示室でシルクのコートにお気に入りの長いスト

ールを首に巻いてすました笑顔をカメラに向けている。こうち

ゃんはいつもの作務衣、顎の下にマスクを下げて丸い顔で笑っ

ている。足元はスリッパで、休日のお坊さんみたいだ。次に送

られてきた写真は藻岩山の展望台に登った写真で札幌の街がこ

うちゃんと母の後ろに広がっている。この間、大倉山に母と登

った時より空気の色が青みがかって、山の木々が秋の色に染ま

り始めている。またスマートフォンが震える。今度は昼食をと

っている写真が送られてきた。ヒレカツ定食。ご飯には色がつ

いている。五穀米かもしれない。母は胡麻の入った小さなすり

鉢を手に取っている。また震えた。ともちゃんと母が並んで写

っている。ここはどこだろう。ともちゃんは、田村正和のよう

な話し方をする。山登りとサイクリングとスキーが好きで、メ

カも得意だ。わたしを呼び捨てにするのはともちゃんだけで、

それは子どもの頃よく大叔父の家に遊びに行って、大叔父がわ

たしを呼び捨てにしていたからだと思う。ほかの兄弟はもうそ

の頃には家を出ていた。小学生の頃はともちゃんに憧れて、会

社から帰ってきて白いワイシャツ姿のままテレビを見ながら夕

食をとっている横顔を見ていた。結婚したいと思っていた。こ

うちゃんは母が節子おばさんに似ていると言う。節子おばさん

はこうちゃんのおかあさんで、母の叔母だ。わたしも時々はっ

とする。今のは節子おばさんが話していたみたいだと。という

ことは、先祖の誰かもこんな話し方をしていたはずだ。どこか

ら流れてきている声なんだろうか。


帰ってきた母に、楽しかった?と聞くと、わたしは友だちに比

べると幸せなのかもしれないとつぶやくように言った。母は今

日も危うい感じの精神で食卓の上に箪笥から引き出してきた引

き出しを二つ並べてアレクサから見えるように置いて、半分し

かストールが入っていないと言っている。でも、いつもより声

が小さくて、激しく責めてこない。今日は母が言うように幸せ

なのかもしれない。幸せだと責めるエネルギーが湧いてこない

のかもしれない。夜になると母は誰かとずっと電話で話してい

た。私は変わらず顎ばかり見ている。鎌倉の猫さんから「今夜

もブロムシュテット先生すごいなあ」とメッセージが届く。



――――――ごはん


このごろ塩麹はヨーグルトメーカーにまかせてしまう。

今日は、岩手の米麹。きれいな白。


たまごチャーハン

舞茸のスープ

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夕べの鶏の骨でスープを取って

きりたんぽ。

新米のいい匂いがする。

きりたんぽが新米の季節と同時に始まることを、ヒゲの人

から聞いた。中学の学校行事の旅行は秋田で、覚えている

のは十和田湖の澄んだシャーベットグリーンの湖の水の色

と、きりたんぽだけ。大広間に並んだ御膳に小さな鉄鍋が

それぞれに置かれては木の蓋を開けると湯気が上がってく

つくつたぎっていた。このおいしいものはなんだろうと驚

いた。あれもたぶん新米だったのだろうな。新米の香りを

意識したことのない子どもだったのだと思う。


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夏にどっさり買ったひじき。

汗をかかなくなると、体はミネラルを要求しなくなって、

毎日食卓にのぼらなくなった。

梅酢のひじきサラダと花らっきょう

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by hibinosara | 2023-02-02 05:49 | Comments(0)