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日々の皿

おしゃべり









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10月27日(木)  晴れのちくもり  18/9℃



隣町の図書館に本を返して、その先の長い橋を渡って隣の島に続く

長い橋を渡る途中、スカイツリーが川の遠くに見えた。

スカイツリーなんて見てもしょうがない。

建った頃はそう思っていた。

十年くらい前、友のご両親もスカイツリーを見学するために上京し

たと聞いた時はとても驚いた。

そんな話をすると、N美ちゃんはあんたは都会の人やからそう思う

んや、わからない人やなー、見たいもんやでー田舎の人は。母ちゃ

んを東京タワーにもスカイツリーにも連れてったで、と言った。

今は驚かない。

何処か遠くから帰ってくると、灯台みたいに見えてほっとするよう

にもなった。

母にあの小さなスカイツリーを見せたかった。

スマートフォンから母のアレクサに繋いで声をかけた。

母の気分は今朝も保たれていた。でも、三日と持たないし、日のう

ちに何度も変わる。だから、びっくりしないように構えは作ってお

く。構えなんて大袈裟だけれど、ガードは下げてボディブローを受

け続けられるように筋肉に力を入れておくみたいなことだ。

「スカイツリー見える?」「見えない」「空に爪楊枝みたいの突き

出てない?あれがスカイツリーよ」「ふうん」

これから海の方の図書館に行くと言うと、私は借りられなくなった

と母が言った。

以前は母がこんなものを読みたいと言うと探してネットで予約をし

ていた。でも私をはっきりと憎み始めてから母は図書ばかりではな

く、ほかのこともほとんど頼まなくなった。

けれど札幌とオンラインになっていると何をしているのか大体の様

子はわかる。母も聞こえるのはわかっているのだとは思う。そこが

妙なところなのだけれど。

母が困っていると、ヒゲの人を介したり、こうちゃんを介したりし

て、私は黒子になっていた。

104で電話番号を調べて注文をしている時はよくないことが起こ

らないように耳を澄ました。母は小学生のように、一から十まで自

分のことを述べる(いや、この頃の小学生は個人情報に敏感だ)。

あまり余計なことを注文先に言ってもらいたくなくてやきもきした。

本を借りたくて図書館に電話をしているのも聞こえていた。司書に

うまくイメージが伝えられなくて苛立っていた。でも、声をかける

と発火して、震えながら怒る顔を見ることになるから黙っていた。

でも、今日は話が聞けそうだ。

冬場は郵送図書に戻してもらおうと電話をしたら、もうできませ

んと断れたと言った。そんなことはないだろうとオフラインにし

て、札幌の図書館に電話をする。

いつの間にか空がうるさくなっていて司書の声が聞こえない。こ

ちらからも爆音が聞こえているよう。

以前は高齢という理由だけで郵送できたけれど、サービスは要介

護と障害がある方だけに限定されて、郵送はできるけれど有料に

なったと言った。送って送り返すと本が買えてしまうほどの費用

がかかってしまうと言った。

空を見上げるとヘリやセスナがバリバリ飛んでいる。

礼を言って電話を終わらせて、何事が起こっているのかと見渡す

と遠くに大きな煙が上がっている。火事かもしれない。

道を渡って海の方に向かう遊歩道に向かう途中、ふりかえるとさ

っきより大きくなった黒煙が見えた。

母とオンラインにする。

顔が現れる。母はピアノの上でごはんを食べながら待っていた。

何食べているの?卵かけご飯。卵一つじゃ足りないのにもうない

の。いいなあ、卵かけご飯大好きよ。あとで卵送っておくね。い

いわよ送料が高いもの。札幌から送ったらそんなにかからないの。

今ね、火事がすごいの。あらあ、ビルの倍の高さの煙が上がって

いるね。一人?今日は家で仕事をしているよ。私もやらないと。

早くかえりなさい。まだ図書館についてないの。そういえば牛す

じどうだった?美味しかった。きのうまであったの。よかった。

札幌の黒豚のお店で食べた牛すじの味を真似したの。味が濃いっ

て言っていたから薄めにしてね。そお?覚えてない?知らない。

食べたら忘れるの。ほら、和紙のコラージュの壁掛けが素敵だっ

て言っていたお店。知らない。大丸の連絡通路を通ってレストラ

ン街に入って右側にある「黒豚」の看板がかかっているお店。思

い出した?

広場はぽかんとした顔で黒煙の方を向いている人でいっぱいだっ

た。お揃いのスタッフTシャツを着たグループは手を止め、自転

車に乗っている人は自転車を止め、時間も止まっているようだっ

た。

今どこ?隣の隣の島。早くかえりなさい。


カルディーで買い物をしていると、電話が鳴った。

Yさんが待っているのだそう。バスに乗って急いで戻る。



―----------ごはん


夕べのきりたんぽの残り



近所に食べに行った。

神経が尖っていて、食べ物を作る脳みその領域がなくなっていた。

外はすっかり夜になっていた。

埠頭の方の評判のいい一軒家の食堂は夜はお酒を飲む店になっていた。

隣にはおしゃれな煮干し系のラーメン屋ができていた。

でもとても空いている。

この辺りに来たのは、一年ぶりかなあ。

戻って、鴨ラーメンのお店に入る。

ラーメン屋にもゾーンがあるのだなあ。

ここは高級路線を狙っている、いや、狙っているのが見えちゃうお店だなあ。



by hibinosara | 2023-02-03 05:05 | Comments(0)