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日々の皿

2月26日(金)の食卓/Yさんの握りなど  晴れ

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男爵・アンデスレッド・さつまいも






皺とそばかすに覆われた男爵を指先で押すとぶよぶよする。

「今年は寒かったから凍っちゃったのもあるかもしれない

から、捨ててね」と母は言っていた。

いくつかの男爵は溶けて水が出ていた。

食べられる気配に乏しい芋を湯気の立った蒸篭に入れる。

すっと串が通ったところを取り出して、包丁で二つに割ると

すすけた薄茶色で、口にすると妙に苦かった。

ごめんなさい、と謝って捨てたけれど、ゴミ箱で湯気を立て

ている四つの男爵には生気があり、おいしそうで、なんだか

すごい罪悪感を感じた。

一緒に蒸した、アンデス・レッドとさつもいもはつぶし、ア

ンデスはポテトサラダに、さつまいもはなにを作るかまだ決

めてない。

夜は外食だから、昼はサンドウィッチにして、お腹の具合を

コントロールする。

去年の暮れ、魚屋に向かうとき視線を感じて、通路の向こう

を見ると、懐かしいYさんがこちらをじっと見て、息子さん

のKさんと一緒に立っていた。すこし言葉をかわし、家に帰

って「会った!」とたくやさんに伝えると、Yさんが病気をし

ていたことを料理人のNさんから聞いて来て、そのせいかわ

たしはYさんが死んでしまった夢を見た。そのことは話さな

かったけれど、行っておいたほうがいいかなと言うので、ひ

さしぶりにYさんの握りをつまみに向かう。

みんなすこしずつ年を重ねていた。建物や皿は奥行きを深め、

人間は形や髪の色を変えつつあった。

けれど癖というのは年をとらずにいて、癖がその人をつくっ

ているといっていいくらい不変だった。

だからなんだかヘンな感じだったのだ。十歳くらい年をとっ

た着ぐるみを着たひとたちが目の前に立っていて、話すうち

に着ぐるみから本人が現れてくるというか。

わたしたちだって、十歳くらい年をとった着ぐるみを着てい

るわけですけど。

変わらないのはイングリット・バーグマン似の女将さんだけ

で、うつくしく輝いていた。あんまりきれいだったから、何

度もしつこく「きれいですね」と口にせずにはおられなかっ

た。○寿司の宝!

ともかくYさんに引退の気配はなくほっとする。

死んでしまう夢を勝手にみたりしてごめんなさい。


----昼のごはん----


ポテトサラダ、人参サラダ、半熟玉子とハムのサンドウィッチ

オニオングラタンスープ

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-----夕方 人形町のYさんのお寿司屋さんで----


うのはな(穴子の煮汁を使ったしっかり甘め懐かしい味)

オーストラリアの牡蠣、お造り(カジキマグロ、鯛、えぞあわび)

いか印籠詰め、玉子焼き、椎茸旨煮、しおから(繊細だった)

えびおぼろを使ったおつまみを食べたいとお願いしたら、

おぼろをコハダでつつんで桜のように五片に象ったつまみを出してくれた。

握り十貫くらい。

鯛、さいまき海老、とりがい、まぐろ二貫、穴子二貫、煮はまぐり、すみいか、しめ鯖、

のような気がする。けっこう酔っぱらっていたので。

最後は四つ切りのかんぴょう巻き。わたしたちの定番。


穴子のやわらかさと風味はしっかり舌に叩き込んだ。

仕入れているお店も教えてもらったし、

竹で籠を編んで・・やわらかーく煮てみたいなあ。


by hibinosara | 2016-02-29 18:46 | Comments(0)