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日々の皿

8月21日(月)  くもり  32/24℃

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「とんかつがたべたい」

めずらしくリクエストがあった。けれど、午後もパタパタする

予定だからスタジオショップから戻ってくる髭の人と待ち合

わせて、行ってみたかった◯◯亭を指定したのは私。

夜は営業してないし、昼は一時頃行ってももう仕舞いになっ

ているし、なかなかタイミングがあわなかった◯◯亭は、長

屋を改装した洋食屋だ。

お店に入るといきなり薄暗く、狭い店内はほぼ満席だけれど、

妙に静かで、カウンターで食事をしている人たちは過去の残

像のように見える。

小さな窓にビロードの赤いカーテンをかけて、洋食屋らしさ

を演出している店内に新しいものはなく、色褪せた映画のポ

スターや(例えば「雨に歌えば」)、同じく色の抜けた風景

写真、野球選手の写真、額装されたシングルレコードにLPレ

コード、本棚にきっちり並ぶ背表紙が黄色くなった漫画本、

そういった趣味のものたちが壁を覆っている。

注文を取りに来てくれたコックコートの店主の奥方とおぼし

き人は、不幸そうだった。

店主が文句を言うたびに眉をひそめ、またかというような諦

めた声で「あ すみません」とちいさく言う。

「ポークカツですね。ごはん残して欲しくないので、サイズ

があります」という声にも嘆きが含まれて、まるでファドを

聞いているような哀しみがあった

店主は恰幅のよいわがままそうな男で「ありがとうございま

した」という声にもゆるぎのない自信がみえる。

でももしかすると、奥方ではないのかもしれないし、たまた

ま嘆きの声日なのかもしれないし、店主は店主の兄でひさし

ぶりカウンターに立って調理しているのかもしれない。

カレーはおいしかったけれど、フライ類はそうでもなかった。

でも、こういうお店があることが貴重なので、味は二の次で

いい。


黒地に黄色の文字で血しぶきが吹いたような字体の「不健康」

のTシャツを着ている外国人が目の前を歩いて行った。

ご丁寧に「ふけんこう」とふりがなをふってあるところが気

に入った。誰のためのふりがななのかわからないところが。

しばらくすると、東京駅の近くで「LEON」のマチルダみた

いな足の長い女の子が足取り軽くぴょんぴょん飛ぶように歩

いていた。

ボブカットもチョーカーも着ている服もみんなマチルダ風で、

たぶん憧れてるんだと思う。ちがうかもしれないけど。

ああいう憧れって、もう失ってしまったな。

私はジャンヌ・モローに死ぬほど憧れて「死刑台のエレベー

ター」でパリの街を(パリだったかな、それすらもう朧)ジ

ュリアンを探してさすらうジャンヌ・モローのスーツを母に

頼んで縫製さんに真似て仕立ててもらい、何軒も靴屋をめぐ

ってシックな10センチヒールのパンプスを探し、ちいさな

バックを手にジュリアンのいない夜の街を、さすらうふりを

していた二十歳のころ。めまいがする。




スイカのジュース

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◯◯亭で

髭の人ポークカツライス

私 エビとポークのフライ インドカレーをトッピングで

どちらにもお味噌汁がついている。



・焼き野菜

 緑の茄子 紫の玉ねぎ ピーマン ジャガイモ

 バジルソースと塩で

・シェーブル

・フィグのパン

・ライ麦のパン


緑の茄子はイタリアの品種で、去年はもうすこし外国の味が

したのだけれど、今年はそうでもなかった。風土に馴染むって

こと、野菜にもありそうだけれどどうなんだろう。


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by hibinosara | 2017-08-29 08:18 | Comments(0)