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日々の皿

12月21日(木)  晴れ  10/1℃

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「ふつうの蕎麦屋のふつうの蕎麦がたべたい」

と髭の人。天ぷらそばがたべたいんだそう。

てくてく歩いて隣町の蕎麦屋に向かう。

そこの主人を築地のいつも行く魚屋でときどき見かける。

清潔で正直そうな顔つきをしている蕎麦屋の主人を、魚屋

の主人は好いているようで、顔を突き出して嬉しそうに話

しかけている。「うちの魚入れてるんだから旨いんだよ」

と、一度紹介された。

ホールに出ている三角頭巾を被った大女将も野の花のよう

にそっとした佇まいの人で、さらさらしたきれいな笑顔を

浮かべる。

蕎麦屋としては大きい。ふつうの蕎麦屋の三倍はある函だ。

ぽつ、ぽつ、お客さんが入りはじめた頃だった。

喫煙席にはご近所と思われるおじさんが独り座り、新聞を

読みながらたばこを吸ってアルコールの入ったグラスをテ

ーブルにしているふぜいの席が二つ。禁煙席は三つのテー

ブルが埋まり、一つはメニューをつぶさに見ている二人の

おんな客、もう一つの席にはビールのジョッキや卵焼きが

のって宴がはじまっている。奥の大きなテーブルはよく見

えない。

髭の人はめずらしく大いに迷って、天丼を注文した。

わたしはこのところカツ丼にはまっているので、カツ丼。

髭の人が上カツ丼にしたらと勧めてくれたけれど、上とふ

つうのカツ丼の違いは、肉にあるのではなくて卵の有無だ

というので、ふつうのカツ丼のセットにする。セットはサ

ラダか蕎麦のどちらかが選べて、私はあたたかい蕎麦にし

た。

ゆるりとしている蕎麦屋だ。

小春日和の野っ原に座っているような心地さえする。

「なんかいいね」と髭の人に言うとにやりと笑って「なん

かいいんだよ」とこたえる。

若女将がさりげなく独り客に声をかけたりしてるのもいい。

奥の暗い席から「おじょうさん」と声がかかって「私お嬢さ

んじゃないけどいいですか?」という若女将の対応に見惚れ

ていると「二十年か三十年前はお嬢さんだっただろう?」な

んていう軽口を返すおじさんたちとのやりとりを聞いていた

ら、急にじん、とした。

これはなんだろう、この静かな感動は。これは、ゆとりのよ

うなものではないだろうか。

数日前の胸の小傷は残ったままだったから、余計にしみた。

ゆとりは意味をもたないぼわんとしたあたたかいものだった。

カツ丼についているちいさな「たぬき蕎麦」は舌になじみの

あるふつうの蕎麦屋ふつうの蕎麦の味で、ほっとした。

髭の人にも分けると「いいねえ」と言った。


朝、東京都中央区川沿いのベランダ育ちのレモンで焼いたケ

ーキは、型に残った端っこを味見するといまひとつ風味に欠

けていた。いつもはもっと「ふわっ」と立ち上る香りがある

んだけれど。

それでも、明日の冬至にむけてシュトレンとレモンケーキは

北と西に旅立ち、ほっとする。



朝は

ヨーグルトとりんご


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昼は

夕べののこりの牡蠣のシチューにホワイトソースを加えたり、

ポルチーニを加えたりして、ドリアにする。


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おいしかったー。


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by hibinosara | 2017-12-30 05:51 | Comments(2)
Commented by mary_snowflake at 2017-12-30 08:42
hibinosaraさん、ゆるりとしている蕎麦屋さん、その温かい雰囲気が伝わってきます。
今年、hibinosaraさんのブログに出会い、色々な“ 真 ” を教えていただきました。
今年一年、本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いします。
髭の方さまと 良いお年をお迎え下さいね^ ^

Commented by hibinosara at 2017-12-30 13:43
サファイヤさん
ふつうって、大切だなあと思いました。特に疲れているときには。

私はサファイヤさんの、あかるさや、純粋なお心に救われました。
ブログにうかがうと、疲れもとれました。こちらこそありがとうございました。
来年もまたどうぞよろしくお願い申し上げます。

ありがとうございます。
サファイヤさんもご家族とよいお年をお迎えください。
ごゆっくりできますように(^_−)−☆