日々の皿

明日で、おしまい







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10月5日(金)  くもり  20/18℃


築地場内市場は明日まで。

未練はないということにしてはおいたけれど、大水さんが

移転されないことが、心から寂しい。

今、通っている店は、はじめてそこで買った魚や野菜、

節もお話ししたことも、すべて覚えている。

大水さんとの出会いは年末、翌日から市場が正月休みに入

る朝だった。

店先に大穴子が一本出て、その上に符丁が付いていた。安

かった。

ください、と言うとその符丁をぺらりとはがして「傷もの

ですよ」とおっしゃった。正直な人だな、と思った。

その穴子がたいそうおいしくて、また買いに行った。

「穴子はありますか?」と聞くと驚いた顔をして「うちは、

穴子屋ですから」とおっしゃった。

大水さんが穴子屋だということを私は知らなかった。

末は店先に子持ち昆布も並んでいたけれど、ふだんは

にもなく、暗い箱のような生簀から活きた穴子を選ぶ店

った。

大水さんで穴子を買うようになってからも、場内には穴子

を扱う店はいくつもあるので、あちこちで試した。

素人と見て横柄な態度をとる店もあったし、まずくて安い

穴子を積み重ねて扱う店もあった。なんということもない

ふつうの穴子を並べる店もあれば、寿司屋で紹介された店

にも行った。

れど、結局大水さんに戻った。

それは私がコツコツとされている小さな店が好き、という

理由もあるけれど、店の前を通る時ときどき見える大水

んの体がきっちりと穴子をさばいてきた形に成っているこ

気がついたからだ。それは、かたく結ばれた唇にもあ

われいたし、いつも遠くを見て穴子のことばかり考え

いるうな眼差しにもあった。几帳面さ票に記され

いる角った字にも現れていた。

最後の穴子を予約に行き、いつもは注文をつけたりしない

けれど「ちゅうぶりの大きさで、身のぷっくりしているの

8本」とお願いすると、「台風24号が来る前までは、

今年一番いいと思うような穴子がでてましたけど、今はい

けません」とおっしゃって生簀の穴子を見せてくださった

。たしかに20本余りのなか黄色味をおびた旨そうなのは

1本かそこらしか見当たらない。

うまいのがないからほかで買った方がいいよ、と暗におっ

ゃっているのだけれど、そんなわけにはいかない。

そして、ほんとうに残念ですと伝えると、不覚にも涙がじ

りと上がった。


築地は大混雑をしていた。

わたしたちは、センリ軒に並び、トーストとシチューのセッ

トを注文した。食べておきたかったけれど、でも、そんな特

別においしいものじゃないのは知っている。

出てきたトーストはマーガリンがベーッ、と乱暴に塗ってあ

るだけだし、サラダにはオーロラドレッシングがどっと。

でも、その荒々しさが市場によく合っている。

センリ軒はマスターと女将さんごと、豊洲に移られることが

決まっているけれど、ここで食べられるのは最後。


今日はあちこちで「みんな会いに来て、お別れの挨拶をして

いる」という声が聞こえた。


―――-

朝は

センリ軒でシチューとトーストのセット

カウンターにはじめて座る。

わたしたちの前にはトースターと、コーヒーを保温している

巨大な機械があって、熱気をうけながら、狭い狭いスペース

で雑に扱われながら、でも優しさを感じながら、食べた。

この荒さが好きだったな。



昼は

センリ軒で作ってもらった、

カツサンド


・ジョイラッククラブがテレビではじまって、みてしまった。

 なつかしい、映画。

 「あなたの愛は勝っていて、わたしの愛は劣っていると思っていた」

 というシーンをなぜかよく覚えていた。

 監督はウェイン・ワン  Smoke や Blue In The Face を撮っているひと

 大好きな映画 そのうちやっぱり買おう。



夜は

・さんま塩焼き へべす(平兵衛酢 宮崎は日向の柑橘)と

 大根おろしを添えて

・茄子と金山寺味噌の炒め物

・糸コンニャクのきんぴら

・胡瓜と茗荷の甘酢

・お麩と卵の吸い物


 さんま、おいしかった。

 へべすは、カボスやスダチよりやわらかな風味の種無し

 柑橘。緑色の早生の温州みかんとよく似た酸味だった。

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by hibinosara | 2018-10-14 14:48 | Comments(0)