布を煮る
10月15日(月) くもり 21/16℃
空はまだ、朝の気配もない。
牛乳をまる一本深いバットにそそぎ、一番ちいさな火口に
かけ、できうる限りとろ火にする。
バットで牛乳を煮詰めるのは、いまの鍋はどれも性能がよ
いからどれだけちいさな火にしても、高脚をはかせなけれ
ば分離するほど沸いてしまうからだ。
牛乳を火にかけているのを忘れたころ、台所からあまい匂
いがほのほのと漂ってきた。
バット全体にうすい膜が帆のように張ってくつくつと泡が
透けて見える。
膜はよい蓋だからこれを破かないように気をつけて、三分
の二くらいまで煮詰める。
ようやく明けてきた朝に牛乳の匂いがうすぼんやりと広が
っている。
ゆうべのうちに栗はやわらかく茹でてあるから、ひげの人
が起きてくる頃にはスウプはできるはず。
今年は栗が安くてしかもおいしいから、つい買ってしまう。
夜は渋皮煮をつくった。
重曹をくわえて栗を煮た汁が、布が染まりそうなほど濃い
色で、発作的にサラシを入れて煮詰めた。
今朝、志村ふくみさんの文章を読んだせいもあるかもしれ
ない。
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朝
ブドーパンと栗のスウプ
今日は炭水化物を欲しつづけて
おこわごはんに続きバターたっぷりのトーストを2枚
夜
閉店間際のデパートの地下食料品売り場の人波に酔いながら
太巻きといなり寿しを買う。いなり寿司は買う店を間違った。
なのでもう一軒行って、こいなり寿司を求める。
ひげの人の現像が終わるまで、間違った方のいなり寿し全種
類を食べる。なるほどなあ。この間あんまりおいしくないと
思った店のいなり寿しは、言葉にすると、うすくらい味。
酢飯の酸味がすくなくて、甘くもない代わりにめりはりがな
い。おあげさんの油をしっかり抜いてそのせいか、パサつい
て感じる。
こいなり寿しもひとつ口にする。明るい!
酢飯が酸っぱくて、その分甘い。おあげさんの油はほとんど
抜いておらず、煮汁をたっぷりふくんでジューシー。
めりはりのある味。
好みは、こいなり。間違った方のいなり寿しはわたしが作る
いなり寿司にとても似ている。
・野菜の太巻き
いなりずし各種
・レンコン焼き
加賀のれんこんはおいしいけれど、佐賀もおいしい。
すこし安価でもあるし。
けれどまだ味がのってなかった。おいしくなるまでもう少し。
・おねえさんが送ってくれた蕪の葉としめじ茸の炒め煮。
スライスにんにくも加えて。
下町の八百屋さんで「蕪の葉は食べられるんでしょうか?」
と聞いていた私を思い出した。
まだ、ぜんぜん料理の出来ない頃。
あの頃よりいくぶんましだけれど、いまもぜんぜん何も知らない。