日々の皿

荒々しい庭

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11月27日(火) 快晴  15/氷点下1℃


まだ温かいおでんをジップロックに詰めて東京駅へ向かう。

荷物は最小限度。氏神さまと神棚のお酒、おみやげ、食料、

眠れない夜のためのお酒、本は迷って二冊。映画はiphone

に数本ダウンロード。音楽はCDをノートパソコンに読み

み、着替えをすこし。それから小さなカメラを一台。

重さのないものもあるけれどそれでも「ずしっ」とくる。

新幹線のお弁当は崎陽軒にした。

夕べカレーをすこし食べてそのあと何も胃に入れてないか

ら地底から新幹線が出て、車窓に景色が流れはじめるのを

待って紐を解いた。

経木が一面を覆っている。

その薄い木の板ごしにほのかなぬくもりを持った匂いがじ

んわりと立ちってくる。

そのまま30秒ほどそ匂いについて考察しつつ経木の向

こうに並ぶ数々を想像た。

崎陽軒のお弁当は特においしいわけではないのに、醸し出

される幸福感がすごい、といつもいつも感心する。

焼売を蒸した蒸気と米を炊いた湯気を経木が受け止めう

く広げ、ほんわりとした気配を弁当のなかに残している

愛おしんで焼売にからしを真珠のようにまあるくのせる。

もぐもぐ、もぐもぐ、おかずの上で迷う箸もしあわせのう

ち。

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北上で降りて、一両編成の電車にのる。

今年は暖かい。小春日和の光のなかであらゆるものがぽか

ぽかしている。去年はたしか11月19日に降った雪がそ

のまま根雪になって、この電車に乗ったときにはどこもか

しこも真っ白に雪に染められていた。

電車はがたんごとんゆっくり進む。

通路を隔ててとなりの席から母娘の会話が聞こえてくる。


バスに乗ってさらに1時間。


鍵を開けて空気を入れる。

荷物は外に置いたまま、家をぐるりと眺めた。変わってな

い。

でも、去年の大雪のせいか庭は厳しさを増していた。

荒々しい表情で生き残ったものだけが力を増している気配

だ。綺麗に造られた庭にかすかに残っていた叔父の悦びは

消えていた。

ヤマナシは今年も実らなかったよう。

桜の木はぐんと太くなった。

叔父の庭の木々はみんな大人になって遠くなった。

叔父の声を忘れてしっかりと根を張って、木々は木々の世

界に属しているようだった。



すべての窓を開け放つ。

今年は大発生したのか窓を開けるたびに冬眠中のカメムシ

が「ぼとぼと」落ちる。もう慣れてきたとはいえあまり気

色のよいものではない。風呂場の窓を開けたときには「

か雨」のように「ざざざっ」と落ちてきたカメムシに固

まった。

蜘蛛の巣を取り、カメムシの死骸を箒で集める。

2時をすぎた頃には日が陰りはじめる。もう夕方の光だ。

畳の部屋とストーブのある部屋の床の水拭きをする。

4時を過ぎれば暮れきって昼間の光は失われるけれど

北海道で育ったわたしにはこれが懐かしい

火を熾す。

新聞紙をまるめ、小枝を置き、太い枝を重ね、薪を組み、

新聞紙の端にマッチで火をつける。

炎はすこしずつ広がって、やがてメラメラと小枝に移る。

枝は初夏にひげの人が打っておいてくれた。

物置を開けたとき、太さごと段に並べられたその几帳面

美しさに驚いた

夜はストーブに薪をくべながらラジオに耳をかたむける。




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夕飯は今朝作ってきたおでん

冷蔵庫に入れる時ほんのりぬくくて、家が恋しくなった。

去年はパック入りの出来合いのおでんを夕食にした夜が

あったのだけど、それに限りなく慰めてもらっただか

ら、三泊ともおでんでいい。食べ物の匂いが含まれたあ

たたかな湯気ほど大事なものはない。

じぶんで作ってきたのもなのに、幸せでたまらなかった。


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by hibinosara | 2018-12-05 09:27 | Comments(2)
Commented by na7ko at 2018-12-05 20:38 x
美しい景色ですね。維持するのは大変でしょうけれど。
崎陽軒のお弁当の考察、ほんとうにその通りだと思います。
そして、自分が作った食事に助けて貰うってよく分かります。
このところ、そんな日々です。
Commented by hibinosara at 2018-12-06 06:53
ナナコさん
さびしくてうつくしい景色です。
そうですね、自然にのみこまれるのをふせぐことしかできないのですが、その荒々しさも気に入っています。
叔父の庭で人知れず、花々は咲き、散ってゆくことを思うと、なにか不思議な気持ち(それはあたたかくはあるけれど)になります。
留守をするときは大量に留守番ご飯を作ってゆくのですが、未だにそれを食べていますよ(笑)

崎陽軒のお弁当を召し上がったことがあるのですね!!
湯気と経木の力って天才!と感じているので、じぶんのお弁当でも実験してみたいと思います。
幸福感のしくみを実証できるといいな。