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日々の皿

かあちゃんの店

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11月29日(木)  雨が降ったり晴れたり曇ったり  6/-2℃


夕べもまたソファで眠った。

今日も掃除の続き。

家は掃除をされると喜ぶ。

キラキラして息づいてくる。

今日は注文したガラスクリーナが届く。

ガラスも鏡も家具もピカピカにするつもり。

朝ごはんは食べず、コーヒーを何杯も飲んで、今日は電話

をせずにとにかく行ってみる。蕎麦屋へ。

その前に畝を歩き木を組んでつくられた鳥居をくぐり畑の

むこうにある氏神さまにご挨拶に行った。

しいんとしている。変わらず静寂。

鈴のじゃらじゃらと柏手がよく響いて梢に消えた。

御神酒はいつもは日本酒だけど焼酎にした。凍りにくいと

思って。

畑の持ち主の牛飼いの岩井さんのところへお土産を届けに

ゆく。岩井さんはいらっしゃらず奥さまがにこやかに出て

らした。

ここからてくてく歩いて蕎麦屋へゆきます。

熊よけの鈴を忘れてきたけれど、もう冬眠しているといい

なあ。

なるべく道の真ん中を歩きます。襲われないように。

空、雲、太陽、風、山、鳥、川、せせらぎ、野原、人の住

んでいない家、ときどき住んでいる家。

じぶんの足音がよく聞こえます。

大きな木を扱う仕事をしているおじいさんから声をかけら

れました。「どこいくの?」にこにこして道の近くまで出

てきて「ビール工場で働いてるの?」「どっからきたの?

お蕎麦屋さんに行きます」「ふぉわっ。あんなところ

いくの。あんなとこまでー」おじいさんの顔は好奇心

きらきらしていました。

ビール工場を過ぎると山に入るので上り坂です。急に人里

から離れた気配がしました。

蕎麦屋の旗が遠く、ハタハタとはためいているのを目にし

たときは嬉しかったな。

そして「営業中」の看板。

古民家の引き戸をガラガラとあけると、肩の力がすとんと

抜けたやさしい笑顔のおかみさんが迎えてくださりました。

階段をのぼり重い木の扉を開けると畳の広間とテーブル席

が広がっています。人はいません。ストーブが真っ赤にな

って部屋をあたたためています。

天せいろ、煮物、銀河高原ビールを注文します。

煮物はニシン、干し椎茸、人参、高野豆腐、凍り大根、山

うどが互いに互いの旨味を吸いあって与えあって一つの世

界を作っていました。名産の西わらびはとろんとしておい

しかったな。

蕎麦は十割。新そばのよい香りがします。

おかみさんは「冬は店を閉めるから明後日で終わりです。

だからみなさんに一つずつサービスしてるの」とビスケッ

トてんぷらを下さいました。

かすかに甘くてふんわりして、おいしいとか、おいしくな

いとか、そういうこととは別の世界のやさしさがあって、

涙がにじみました。

叔父のことを知っていました。「最期の一年、二年、三年

らい来てたかな」とおっしゃいました。

かあちゃんが三人でやっている店で、かあちゃんたちの笑

はあたたかかった。

食後はインスタントのコーヒーをじぶんで作って冬の景色

を広い窓から眺めました。

歩いて来たというと驚いて、車で送ってくださいました。

熊はやはり出るそうです。

今は見通しがいいから大丈夫だけれど植物の茂る夏が危な

いのだそう。


母に電話で今日あったことを話すと「そのお店はね、英明

がよりどころにしていたのよ。やさしくて、ほっとするっ

て」と言いました。

持ち帰り用に作っていただいたおにぎりには、お漬物がた

っぷりと、野菜のかき揚げもたっぷり付けてくださってい

ました。






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by hibinosara | 2018-12-09 08:05 | Comments(2)
Commented by fusk-en25 at 2018-12-09 08:54
母が死んで無人化していた大阪の実家に帰ると。
帰った日は廃墟の感じがしたのですが。
1日たち二日経ち。人がいると。
家が生き返ってくるような気持ちになったものでした。
その家で私は生まれたの。産婆さんに取り上げられて。
3年前に処分して更地になってしまいましたが。。
心の中にはいつもその家が居座っているのです。
Commented by hibinosara at 2018-12-09 09:15
> fusk-en25さん
家は生き物なのだなあと思います。
地元の方が人が住んでない家は「のみこまれていくっちゅうかね」とおっしゃっていたけれど、
その感覚はなんとなくわかります。
ピカピカにすると、キラキラするものが時々見えます。気のせいかもしれませんけれど。
そうなのですね。
なくなってしまった家々も人と同じように、胸の中で生き続けるのでしょうね。
私も生まれた家の夢をよく、見ていました。