人気ブログランキング | 話題のタグを見る

日々の皿

代がわり





代がわり_c0367403_11212107.jpg









5月3日(金)  くもり  25/11℃


遠く、ヒーヨの声がきこえる。

もしかするとあの白糞の騎士は、留鳥になったのかもしれ

ないな。


きのうにひきつづき、ワックスがけ。

たのしくきちんと掃除ができるよう、BGMは寺尾紗穂

の版画珈琲物語。

さいしょにほこりを吸い取り、お次よごれを落とします。

ガラスクリーナを手にして、床と平行に腕を伸ばし、プシュ

ーと射する。

はらはらと細雪をふりつもらせてフローリングを雪景色

たならば、しばし待つ。汚れが浮かび雪解け茶色のご

とき景となるまで。

ごしごし拭き取る。

これを都合二回。

水拭きをし、ワックスは二度塗ります。

きのうのように塗りたてのワックスに足跡をつけないよう、

細い逃げ道をどこに作るのかあらかじめ打ち合わせて。

どんどんピカピカになって、はー、と休憩をしていると、

スズメがちょんちょん入ってきて、餌皿を探した。




窓際のテーブルで領収書を整理していると、レモンの花の

もったり甘い匂いが流れてきた。

クチナシほどではないけれど、白く厚い花弁を持つ花特有

甘い香りだ。



すこし早めについたので、なつかしい街を散策する。

道幅の狭い街の街灯一本一本に「祝 令和」ののぼりが上

がりはたはたはためいて、お祝いムード。

黄金芋を買いにゆこうか、とひげの人。

古いグレーの外壁に、赤く縁取られた窓枠は健在で、店

に入るとすぐにお茶を出してくれる。

そろそろお節句だからちまきも並んで。

新しいものを否定しているわけではないけれど、二度と

造ることが叶わないようなディティールを持つビルや、

小さな建物が肩よせあっている集合体をがらがらと取り

壊し、その跡地には大きな味気のないビルをどんと建て

てしまう、なかば暴力的な景色にここ十年ほどあぜん

してきたから、個人の営みが残っている街にくると

とする。

おでん屋、漬物屋、お茶屋、雑貨屋、荒物屋、豆腐屋、

履物屋、行李屋、ごま豆腐屋。むかしのままの店もあれ

ば、代がかわって新しい風が吹いている店もある。

跡目問題のあった、牛カツ屋の場所も確かめた。


ある雑誌で「四代目のKさん」の名前を目にしたとき「

あ」もしかして、と読み進めると去年の春三代目が急逝

して代がわりしていたことを知った。ほかの雑誌でもK

さんの写真が大きく載って、いつの間にか、おやっさん

と輪郭やもみあげのあたりが、そっくりになっていた。

二年くらい前に行ったあれが最後になってしまったんだ

な。今は、女将さんも昼しか出てないらしい。

ひげの人は挨拶に行かないと、と気にして、Kの握りも

食べないとな、と言った。

かわらずよい店構え。

入ると、意外にも親方の場所には古くからいらっしゃっ

るYさんが立っていて、なかには次男坊のKさんが入り、

長男のKさんは今日はホール。

週替わりで市場に買出しに行き、週替わりでつけ場に立

っているのだそう。

品がいいな、と思った。

マスコミには便宜上代がわりということにしてあるのか

もしれないけれど。

ビールを飲んでいると、背中をぽんと叩かれて、ふりか

えると女将さんだった。

相変わらずうつくしくて、ライオンの女王のようだった。

ひげの人はさっと立ち、奥で、女将さんと話している。

長男のKさんに相変わらずきれいですね、と言うとうれ

しそうな顔をして「昔みたいな迫力はなくなりましたけ

どねぇ」と目を細くした。

わたしたちはYさんのお造りや、次男坊のKさんが出して

くださる酒の肴をいただいた。

いぜんより心なしか繊細な味付け。

吸い物は間引きのはまぐり。

ひげの人がお酒を呑まなくなって、間が持たないので焼

物はなし(といっても熱燗を三本いただいたけれど)。

Kさんの鯵の三枚下ろしが目の前ではじまって、目にも

とまらぬ速さ。思わず歓声をあげると「毎日やってます

から」と笑った。

十貫握ってもらって、干瓢巻きで〆る。

わたしたちは、おやっさんが本当にいなくなってしまっ

たことを、確かめに来たような気がした。


帰り道、お座敷洋食の店の灯りがついておらず不思議に

思っていたのだけれど、交差点まで来て思わず足を止め

た。道の向こうに三階建になった○○亭がきらきらして

いて。




――――――3日のごはん


朝は

ブルーベリーソースヨーグルト

ひげの人の目の霞はブルーベリーによってずいぶん改善

されたよう。


昼は

なめこうどん

巨大なミツバを散らして。



代がわり_c0367403_14035303.jpg


by hibinosara | 2019-06-18 08:51 | Comments(2)
Commented by まみりん at 2019-06-18 11:28 x
過日は聴きに来てくださって本当にありがとうございました。翌日から予定がつまっていらしたのに、遅くまでおひきとめしてしまいましたね、ごめんなさいね!
そしてそれから、いろいろおありだったんですね、私のとこも築37年、最近やっと排水管の全館とっかえが完了したところです。
あと元号改変ですが、私もあの週は令和奉祝バージョンの日本酒販促で売り場に立ちっぱなしでした。つい口をついて出たセールストークが、『平成の大晦日でございます〜ぜひ日本酒で新元号をお祝いなさってください〜』あながち的外れでもなかったのですね。
猫さんがツイッタで『新元号を祝え、とおっしゃるかたはフォローをはずしてください』と言ってるので、私はずされるかと、、、
こんどはお誕生日をお祝いしましょうぜ。
Commented by hibinosara at 2019-06-18 12:49
まみりんちゃま
こちらこそありがとうございました!
ミトンさんのことがますます好きになりました。お誘いくださり、感謝です。

そーなのですね!おつかれさまでした。
えーん、えーん、まだすこしトラウマ的な感じなのだけれど、でも、二人とも新しい建物に住めない性分だから仕方ないですね。

ナイスセールストーク!なごりおしみ新しきを迎える気持ちが沸いた人たちがたくさんいたことでしょう!!
ふふふふ。「新元号を祝え」という人がいるんだ!びっくりしたなあ。
札幌に帰省しているときに、新元号が決まって「元号入りのケーキはいかがですかあ」という声になんだかなあとは思ったけれど、母には買ってあげるとよかったかな、とすこし後悔が残っています。
猫ちゃんは11月17日ですねっ!!よこちゃまも!!わたしは白亜紀に生まれたので、誕生日はありませんっ!!
今、アンスネスきているの。なんかいいなあ、この方(涙)