桃色のほほ
5月19日(日) 晴れ 25/18℃
小学校2年生か、確か3年生にはなっていなかった頃の一時期
、吃音があった。
わたしは先生にあてられて教科書を音読するのが好きで、それ
は吃音になっても変わらず、椅子をガタガタ揺らしながら読ん
だ。そして自分の吃っている声をおもしろがって聞いていた。
同級生が振り返って見ているのはわかっていたから、さらに椅
子をガタガタ揺らして読んだ。
それはいっ時のことでいつの間にかなくなってしまったけれど
、どうしてか今頃になって、それらしきものが出てきた。
疲れている時や、やらないといけないことが山のように後に控
えている時、口の中にいくつかの話の「頭の音が」重なり溢れ
、唇の穴から外界に出る時にはせめぎ合って濁音となり止まっ
てしまう。
今朝も話そうとしてなんともいえない音を発すると「落ち着き
なさい」とヒゲの人は苦笑した。そうだ、通信簿にはいつも「
落ち着きがない」と書かれていたっけ。
今日もいろいろ焦っていたけれど、ケーキをつくるうちに集中
して静かになる。
焼きあがったシークァーサーをたっぷり入れたケーキを型から
出すとなかなかよい感じだ。
薄力粉(エクリチュール)、無塩発酵バター、各120グラム。
グラニュー糖110グラム。卵2個。シークァーサーコンフィチ
ュール100㏄。ベーキングパウダーは使わず、気泡の力で膨らま
せる。
銀座まで出て、お土産を探す時間がなかったからケーキを焼い
たけれど、ちちゃんに持って行くときはいつだって緊張する。
ちちゃんにロシア料理屋でボルシチをご馳走になった後、久し
ぶりにLちゃんにも会った。おでこがやや後退したようにも見
えたけれど、明るくて正直な雰囲気はそのままで、小石川公園
を散策している後ろ姿は何一つ変わってなかった。
Lちゃんがちちゃんに恋をしていた頃、ほんとうに頰が桃色に染
まっていた話を、前をゆくLちゃんの背中を目で追いながら今日
もちちゃんに聞かせた。
それまで女の人の話を耳にしたこともなかったのに、門前仲町
の中華料理屋で向かいに座っていたLちゃんはほんとーに嬉しそ
うに桃色に発光してちちゃんのことを話していた。
人は恋をすることででこんなに変わるんだと、なかば驚きなか
ば感心してわたしはぽかんとした。
いつだってクールでマイペース、どちらかといえば青っぽい顔
色をした人がだ。
だからか二人の間には今でも新鮮な風が吹いていて、ちちゃん
がLちゃんのおどけた姿の写真を撮っているところなんてなんと
もいいものだったな。
―――――19日のご飯
昼は
雑魚のパスタ パルメジャーノがけ
オリーヴオイルにニンニクの香りと旨味を滲ませて雑魚
をざっと炒め茹で汁を取り乳化させ、ゆでたての太めの
パスタに絡ませて、白胡椒を挽く。
鷹の爪も合いそう。そのときはチーズはいらないかな。
わたしの昼は
ちちゃんと
ボルシチとピロシキ
ロシア料理屋のマダムがなんとも雰囲気が良いのだ。
情の濃さそうな人。カリンカより愛の讃歌が似合う人。
おやつ
ゆったりした時間が流れているKarunaという一軒家カフェで
マフィンとチャイ
ちちゃんとわたしは通りに面しているカウンターに座ってお
しゃべりをした。
ガラス窓の向こうの草や花に傾きはじめたお日さまがあたっ
ていて、それは穏やかでとてもいいものだった。
店の前にある、大きな鉢に入った柚子の木はもう何十年もこ
こにあるのだそう。そして、昔はよく実をつけていたのだそ
う。柚子の木も寡黙になる時期があるんだろうか。
この柚子を植えた前の持ち主に会ってみたいものだな、と思
う。
夜は
こうちゃんが送ってくださった岸田屋のポン酢で
ぶたしゃぶ