待ったなし
11月2日(土) 晴れのちくもり 20/11℃
今日は待ったなしで母のご飯を作ってしまわねば。
きのう、タワーマンションの窓の明かりが灯る頃帰ってきて、
家に入る前に見上げながら電話をした。
ちちゃんと会って来たと知った母はちょっとつまらなそうな
声で「じゃあ今日は何もしていないのね」とつぶやくように
言ったので、間髪入れずに「でもお母さんのおこわご飯は朝
のうちに作ったよ」とご機嫌取りをした。
起きてきたヒゲの人がコーヒーを入れてパソコンに戻ってき
た時、「ヒーヨのヒーヨちゃんがきていたよ」と寝ぼけた目
で言った。
「え?何それ」
「だからさ、頭の毛がぽやっぽやの、ヒヨドリの小さいの」
と言って目尻を下げている。
「かわいかった?」
「そうでもない」
ヒィーヒィー鳴く雛みたいな声が聞こえていた
けれど、あれがヒーヨちゃんだったんだろうか。
無理かもしれないと思いながら、ケーキも焼く。
ヒゲの人は押し入れから扇風機を出して、効率よくケーキが冷
える角度を作り、ガンガンと風を送った。
半時間ほどで、熱々だったケーキは人肌になった。
セーフ。
母ご飯を詰めた荷物をカートに乗せて橋を渡っていると、さっ
き出航して行った私たちがオランダ船と呼んでいる船が、屋根
に賑やかな人たちを沢山乗せて船着場に戻ってきた。
出航した時も楽しそうな声が聞こえていたけれど、海でいいこ
とがあったのか、それとも酒が入ったのか、さらに盛り上がっ
ている。大きな外国人も多いから、ラグビー関係の人たちかな
あ。人が遊んでいるのを見ているのって、いいものだな。和む。
荷物を送った後母に電話をする。
食べ物が来るとわかると、嬉しそうだった。いつもは月末に
送っているから、待っていたんだな。
ラグビー決勝戦用のビールを買う。私はハイネケンとヒュー
ガルデン、ヒゲの人はオールフリー。
先にスーパーから出たヒゲの人は川沿いのベンチに腰掛けて
待っていた。
夜の川がきれいだったな。屋形船が浮かんでいるし、外灯が
映り込んでキラキラしている。うちのベランダの下に流れて
いる同じ川なのに、角度が違うとこんなふうに見えるんだな。
家に帰ってくると、あらゆる食べ物の匂いが重なって咳き込
むくらい濃縮されていた。窓を開け放ち、玄関も開ける。
ふと見ると、ヒゲの人の顔が疲れ切って目は奥目になりシュ
パシュパしている。一日グルグル走り回っている私を見てい
るだけで、疲労するんだそう。
そういうのって、自分では全然わからない。
さ、ラグビー決勝!
と息込んだのに、私はいつの間にかクッションの中にうずく
まって寝落ちていた。気がつくともう後半。細い目でテレビ
を見る。
試合が終わっても、ヒゲの人はテレビから離れない。何か心
に深く滲むものがあるよう。
―――――2日のごはん
朝は
バタートースト 杏ジャム
ジャガイモのスープ
昼は
チャーハン
肉団子の甘酢餡かけ
母ご飯は
柚子ケーキ
焼売弁当を四つ
肉団子甘酢餡かけ
麻婆豆腐
ナス味噌炒め胡麻和え
おでん
ポークカレー
五目豆
アワビご飯
玄米お豆ご飯
銀杏中華おこわ
あんなに作ったのに、書き出すとちょっぴりのような気になる。
夜ごはんは
おでんと玄米ご飯を食べたよう
私は寝てしまった。