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日々の皿

威張りん坊






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7月10日(金)  雨のちくもり  28/23℃


前を行くのは穴子屋だ。あのガニ股、あの白タオルのねじり鉢巻

、あの青いつなぎ、そして長い、長靴。

築地に場内市場があった頃、一度だけあの威張りん坊の穴子屋

行った。

わたしは市場に通い始めた頃で、殺気立った魚市場で緊張するば

かりで魚は買えず、買えば目方をごまかされて地団駄を踏んだ

その穴子屋に行ってぷっくり太ったところを選んでいると「おー

、いいとこもっていくじゃないか」と褒めるような言葉も鼻か

ら馬鹿にされているのがわかるから、騙されまいと秤に目を凝ら

した。

そのうち自分に合った穴子屋を見つけてそれきり行くことはなか

たけれど、昼を過ぎたころ魚市場側から跳ね上げ式の橋を自転

車でぴゅーと走ってくるのを時々見かけた。

豊洲に市場が移ってからも何度か見たけれど、前とはすこし様子

が違った。かつてのように鼻息は強そうではないし、不自然に吊

り上っていた肩も張り出していた胸もなだらかになり、威嚇する

ような姿勢は鳴りを潜めていた。

凧のように天井高く上がっていた看板は、新しい市場になって

の店も低く小さくなり、店はきっちりと区画で分けられ、冷暖房

完備で寒さ暑さもコントロールされた近代的建造物は人間の動物

的な幅を奪っていくのかもしれない。それは、縁側が消えて半裸

のすててこのおじさんもムームーのおばさんもちゃんとした服を

着るようになったように。

ほんとうにそろそろ新しい穴子屋を探さないと。一度店をのぞい

てみようかな。

「穴子屋さんですか?」と声をかけたい衝動にかられたけれど、

かけてどうするというのか。穴子屋は地下鉄の乗り換えも一緒だ

った。どこへ行くんだろう。どこに行くにもあのスタイルなのか。



日本橋のデパートでお中元を選んで、榛原でメッセージカードを

探した。今年は富士の山頂から太陽が昇りおかっぱの金太郎がマ

サカリを持って仁王立ちしている赤と緑の二色刷りのカードにし

た。必要なのは元気と笑い。


「銀座 町中華」で検索すると、いくつか出てきた一軒は、新橋

寄り、銀座の裏通りにある、U字型のカウンターの店だった。

入るとすぐにスヌーピー柄のシールドの向こうの調理人が人差し

指を立てて、餃子は焼く?と聞かれた。思わずうなずいて、ビー

ルも自動的に注文する。

男率100%、ほとんどが一人客だ。奥の席に座っているブルー

のチエックのベストの銀髪を整髪料で固めている男は場所柄、バ

ーかスナックか紳士服屋の店主に見える。その隣は不明。その隣

は五分刈りの警備員で真っ赤な生姜が散ったチャーハン餃子を

黙々と食べている。その隣は左の腕に金縁の大きな腕時計をはめ

た男で黒い髪に櫛の筋が流れた髪はてらてらと光り、冷やし中華

大盛りメンマトッピングをすすっている。その隣はわたしでビー

ルと餃子ととろみの坦々麺、その隣はヒゲの人で餃子(私と共有

)と冷やし中華。後から入ってきたその隣は最初に餃子を3個頼

んで、春雨丼と言ったように聞こえた。その隣は男の二人組で、

最初にチャーハン、次に旨煮焼きそばを注文して皿を真ん中に置

いて半分ずつ食べていた。うまいな」「うん」というのがこの

店で聞こえた会話の唯一だ。もう行かないかもしれないけれど、

この店は夜が面白いだろうな。呑んだあと花売りのおばさんから

薔薇を一輪買ってラーメンをすすりに行ってみたい気もする。



―――――――10日のごはん


朝は

チーズとポテトのホットサンド

ターメリックチャイ

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昼は

ポテトコロッケプレート

きのう茹でてバターと塩をしたつぶしたじゃがいもを掌でくるくる

と丸めて揚げただけのコロッケ。明快でおいしい。

人参のサラダ、トマト漬けのイワシの缶詰(コロナで自粛中に買った)きゅうりのぬか漬け。


わたしは卵かけご飯と、野菜少々コロッケ一個




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by hibinosara | 2020-07-15 19:33 | Comments(0)