揚げ物
11月30日(月) 晴れ 15/5℃
N美ちゃんがきた。
勤めている豊洲市場のお店が、明日から二週間の休業に入るそう。
それでお魚をいっぱい持ってきてくれたのだ。
夕方も近かったから上がってもらってビールを出した。
母に送る大根餅を少し切って焼き、ベランダからキャベツを持っ
てきて細く切りながら、N美ちゃんの話を聞いた。
「食堂街はガラガラだから閉めた方がお金がかからないんよ。で
も若い子はかわいそうや、まかないで体作っとるからな」と言っ
た。ブロッコリーを蒸していると「和蒸籠なんて久しぶりにみた
わ。あんたおかんや。おかんみたいや。うちのおかんはな、最初
に野菜を出すんや。そうすると太らへんやろ。あー、このマヨネ
ーズおいしいな。うち、マヨラーやねん」N美ちゃんはiphoneを
12に変えたことや、音楽やラーメンのことを「また、話変わる
けどな」と言ってどんどん話した。コロッケを揚げている時は換
気扇とパチパチいう音の向こうにN美ちゃんの声が聞こえた。彼
女は揚げ物が好きだ。好きなあまり神戸の揚げ物屋に勤めていた
ことがあるくらい。だからちょうどコロッケのタネがあってよか
った。わたしはN美ちゃんが揚げ物好きなのを覚えていたけれど、
N美ちゃんはわたしが知っているとは思ってなかったみたい。
東京のソースを出すと蓋を開けて匂いをかぎ「これはいいな」と
耳が後ろに動いて顔がスキッとした。N美ちゃんは漁師の仕事は
やめたけれど、動物的な勘が至るところでピカリと光る。
徳島のヒカリソースもおいしいね、と言うと「あんな。うちは
徳島でも鳴門や。オサメソースの方がうまいで」とジロリと見る。
ヒヨドリが来ている。
すらりとして若そうだ。
ヒーッ、と高く鳴いてベランダの手すりから、イヌほおずきの繁
っているあたりに飛び降りて、黒く熟した実をクチバシでちぎっ
て食べている。
ほお。そうか。
この草がどこから来たのか不思議だったけれど、ヒヨドリがどこ
かで食べたその実の糞が鉢に落ちて、芽を出したのかもしれない。
キミはまたそうやって、この草の種を広げるのだなあ。
――――――――――-30日のごはん
朝
柿
大根餅の味見(サルシッチャ、ひき肉、干し海老、玉ねぎ入り。
おいしい。けれど上新粉の量のみきわめが難しいところ)
昼
・チンゲンツァイと豚肉の炒め物
・大根のぬか漬け
・白菜と油揚げの味噌汁
ぬか漬けは酸っぱく感じてきた。
今年こそ、キムチをつけたい。
夜
N美ちゃんが帰ったあと、とんかつを食べに出かける。
明日は早いし。
二人ともかつ鍋膳
かつを卵でとじたのが鉄鍋にくつくつと出てくる。
これが好き。好きな食べ物でお腹をいっぱいにするって幸せ。