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日々の皿

魚の目の皮





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4月19日(月)  晴れ   21/11℃


いつの間にかセージの花が咲いていた。

今年は、ロウズゼラニウムも早かった。

気づいたらピンク色の花がベンランダの端と端でおひさまに

向かって咲いていた。と、毎年、ここでマークさんのことを

思い出してしまう。

この苗は、しげこさんがマークさんに持たせるためにちいさ

なポットに入れたのだけれど、アメリカには持って帰れない

から私がもらったのだった。

夏の日差しで真っ赤に焼けた白い肌、スーパーで茗荷を珍しがっていた

こと、前日に私が作ったものすごくまずいカンボジア料理(何を作った

かもう覚えてないけれど、それはみんなを黙らせるほどだった)やタイ

料理を、ひでのぶさんの「混ぜちゃって」と言う指令でテーブル

に出すと、舌にのった味が信じられいという戸惑いを含んだ瞳で「

グッド」と言った。

マークさんは遠慮がちにしていたけれど、ほかの三人の男は

完結して、集ったりはしない人たちだから敷地に散らばって、

それぞれがそれぞれのことを行っていた。

しげこさんは店で働き、私の髪は長くビーチサンダルにショ

ートパンツでビールを飲んでいた。その時に撮った写真がど

こかにある。

(「どこかにある」というのがいい。紙は検索不能)

マークさんは心臓発作で死んでしまったけれど、こうやって

思い出すことは、マークさんにも私の過去にも慰めになるよ

うな気がする。

花を詰んでふたつにわけて、一つはほとけさまの前に、一

つはテーブルに置いた。


今日、タイマーとさようならした。

もう10年かそれ以上は働いてくれて、液晶も薄くなっている。

買い替えた新しいタイマーが確かな正確さで時間を計ってひと

まわり大きな音で報せるから、ほとんど出番はない。

この円い旧式のタイマーが刻む時は確かではないけれど、でも、

すぐには捨てられずに、時々は使った。

気がつくと止まっていることもあったし、もはやピピピッとは

鳴らせず、ひひひひひひひひとようやく声を振り絞る老人のよ

うだった。

今日、さわりもしないのに鳴り出した音は痙攣のようで、これ

はもう最期と、お塩をしてありがとうおつかれさまと言って紙

に包みゴミ箱に入れた。

ゴミ箱。

ほんとうは埋めたい。

埋めて、暗い土の中でほかのものになっていけばいいのに。


母はさらにわだかまりが解けて、どんどん話す。

今日は一ヶ月ぶりに整形外科に行って、けれど薬はすべて拒否

して、その代わりに魚の目相談をしたのだそう。

「肩の先生なのにね、見せてごらんって言ってね、靴下脱いだ

のよ。素敵な靴下ですねって。ふふふふ。りかがくれたあのレ

ースの履いて行ったの。まるまってたのちゃーんと先生伸ばし

てくれてね、手袋してね魚の目の皮までむいてくれたのよ。ふ

ふふふ。」

それから母は鍋島焼きや鍋島の敷物のことを興奮した口調で話

した。母の調子がよさそうだと、ほっとする。


夜は「ガーンジー島の読書会の秘密」を少し見た。

これは面白そう。



―――――19日のごはん


朝の三点セット


昼は

青菜とジャコのスパゲティ

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夜もスパゲティ

ロールキャベツを崩してパルメザンをたっぷり。

これは大好物。

おいしい汁を吸ってクタクタになったキャベツからひき肉が

ほろほろと散らばって、パスタにからまる。


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イタリアにロールキャベツスパゲティなんていう料理がある

のかどうかわからないけれど、飾り気のないトラットリアや

マンマが作ってくれそうな味だなあと思う。



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by hibinosara | 2021-05-14 08:48 | Comments(4)
Commented by fusk-en25 at 2021-05-14 22:33
タイマーは専属のものを使わないで。
オーブンのタイマーを使います。
スパゲッティを茹でたり。するのに。
Commented by hibinosara at 2021-05-14 22:52
> fusk-en25さん
そうなのですね。
オーブンのタイマーだけを、可動できるのですね。
タイマーだけ単独では動かないので、やはりタイマーは必要です。スマフォのタイマーも使います。
Commented by Shigeko at 2021-05-22 19:55 x
マークさんにローズゼラニュウムの苗を?
覚えてない。
彼の遠慮がちな礼儀正しさはジジと重なるの。 
店内の花は白とブルーの色調で統一したいのだけれどピンクや黄色が混じっています。

うちもコックさんのタイマーがついに壊れちゃった。
白いコック帽や服もセピア色になって存在感が増してたのに。
静かに回ってジリッと控えめに知らせてくれるので気付かないこともあったけど。
Commented by hibinosara at 2021-05-23 06:54
> しげこさま

ジジと・・・。
ふたりともゆっくりとしたうごきで、そっとしているところがあったね。
大きな黒猫のジジは、外に出て行こうとするとき「ジジ」と呼ぶと、背中でゆっくりと声を受けて「・・・・」ゆっくりと戻ってくるのよね。
そういえばマークさんとはあの後、スタジオの事務所開きの時にもう一度あって、けれどみんな知り合い同士でグループを作って独りぼっちで気の毒だった。バン君って覚えてる?彼が「僕は養子に入って、けれど僕の名前をどこかに入れたくて、だから子供にはコバンって名前をつけたんだよ、バンジュニアって説明していたのを妙に覚えている。けれど、マークさんは???と不思議な顔をしていた。ジジとマークさんは向こうで会えているかな。

えーっ。コックさんすきだったのになあ。
「ボクはタイマーらしいのですが、あまりお役に立てないんです」って風情が大好きだったの。
存在感だけの存在っていうのもいいね😀