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日々の皿

蟻曼荼羅





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8月27日(金)  晴れ  34/27℃


あー。行っちゃった。

東京駅丸の内南口駅行きのバスは、ゆらりとバス停を出発す

るところだった。あと三十秒早く家を出ていれば、間に合っ

たのに、うらめしいなあ。

お昼の時間はまた、バスの本数が少ないのだ。

路線の多い、次のバス停まで歩いているうちに、埠頭の方か

ら来るバスも、スカイツリーの方からやってくるバスも、行

ってしまった。こういう時はタクシーもつかまらないものな

のだな。その上、オリンピックでバスのルートは遠回りに変

わってもいて、遅刻。

猫姫は、カフェの椅子に腰掛けて待っておられました。

今年の夏は、夏らしいお出かけを一つもしていないから、皇

居外苑でピクニックです。

私はお弁当の係。猫姫はお酒の係をしてくれました。

丸の内仲通りをゆき、東京會舘のビルを右に折れると、大き

な空が広がっています。そしてお濠にかかるうつくしい橋を

渡ると、芝生に松がにょきにょきと生える広々とした外苑と

、常駐している機動隊のバスが見えてきます。

ピーカンの夏日だし、平日だし、緊急事態宣言中だし、傘を

屋根にしているぷー太郎さんがぽつ、ぽつ、寝転がっている

くらいで、見るかぎり、夏を楽しんでいる人はいません。

遠くに見えるお気に入りの大きな木まで、猫姫の体力が持ち

そうになかったので、その手前のそれでも大きな木の、木陰

にシートを敷きました。

マスクを外すとあたりの匂いが一気に鼻の穴に流れこむ。

ちいさなピクニックのはじまりです。

お酒に鮭たらこ弁当。フードジャーにひえひえのどろぼう漬

け。(塩にして軽く水気を絞ったナスとキュウリを調味した

酒粕で和える浅漬け)。

わたしたちはどうやら、巨大な蟻の巣の上にシートを敷いて

しまったらしく、お弁当の中にいつの間にか蟻が侵入して、

一片の紅い鮭を捧げ持つようにして巣に帰ってゆきます。体

にも蟻がのぼってきて、皮膚を小さく噛むと「ピリリ」と痛

みが走ります。鮭の肉がたくさん付いた骨を木の根元に置い

てやりました。

樹にも蟻は行き来をして、そこによりかかっている猫姫は蟻

曼荼羅の中心で微笑む菩薩さまのようです。

わたしたちは何を話したのか。

音楽のこと。それから母のことを聞いてもらったり。そして

姫は東京っていうのは美しい街なんだねえと何度も言いまし

た。

遠くをお巡りさんが自転車をゆっくりと漕いで、見回ってい

ます。

こんなピーカンの日も、雪が降っている日も、ぐるぐるぐる

ぐる何度何度も回るのだろうな。



―――――ごはん


今日のお弁当


お留守番のヒゲの人にも同じものを作る。


皇居外苑ピクニックの後、丸の内仲通りで遊ぶ。

バランスボールにのったり、ストリートピアノで猫姫は

ベートヴェンを披露してくれました。バッハも。

シベリウスの樅の木も弾いて欲しかったな。



夜は

焼き鳥丼

それから

猫姫から頂いた川崎のソウルフード

元祖ニュータンタンメン

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by hibinosara | 2021-10-19 09:44 | Comments(0)