中芯

1月11日(土) 晴れ
鏡開き。
わたしは小豆を煮る。
ヒゲの人は鏡餅のカビを取る。
昔々、カビはどうしてたんだろうか。いくら、今より気温が低
いお正月とはいえ、カビの力は今と変わらないのではないかな
あ。それとも「神さま」の依代の鏡餅だから、ナンのその、水
餅にしてうるかして、多少のカビ臭などものともせずに口にし
ていたんだろうか。それとも砂糖をたっぷり加えた一種の保存
食としてお作りをして依っていただいていたとか。
毎年、十一日、思い出すのは赤坂のタートヴァンに口開け飲み
にゆくと、今は亡きマスターが「おめでとうございます」とた
っぷりの餡子とお餅を出してくださったこと。
毎年そのことを鏡開きの日に話します。だからきっとほかの常
連さんも懐かしんで思い出しているのではないかなあ。
毎年指の先でカビを取って割っているヒゲの人だけれど「もう
切腹もしないし、神さまだってこのカビを纏っているのは気持
ちのいいものではないかもしれないから、削ってしまったら?
」と言うと、小さなナイフを出してしばらくやっていたかと思
うと「ここが鏡餅の中心」と鉱石みたいに切り出したお餅を手
のひらにのせてくれました。
今日は中心じゃないところをいただきます。
中心には、ご利益が深く濃く宿っているように思うので、大切
にいただこうと思います。

アレクサの向こうのテーブルについていた母が、若者のように
「サッ」と手を高くあげた。わたしはゆっくり反応する。
なるべく母を目にしたくなくて、これで何日めだろう。
じぶんでは怒っている自覚がないのだけれど、たぶん長年のあ
れこれで、嫌になっているのかもしれない。
怒って口をきかないタイプじゃないし、引きずるのが嫌でさっ
ぱりしている方だと思うけれど、母のことを思うと暗い雲が浮
かんでくる。
七日、帰らなくてよかったと思っている。母はなんだかんだ言
っても帰ってくるはず、と高を括っていただろうし、母を甘や
かしてそういう気持ちを作ってきたのはわたしだ。
今だって、どうしても、かわいそうと思う気持ちが取れない。
おかあさんは老婆だけれど、若いお嬢さんのように自分の小さ
な湖のような心をのぞき込んで涙を浮かべているのがわかるし、
お嬢さんは今もよくなりたいよくなりたいわたしは間違ってな
いのにみんなどうしてわかってくれないのかしら、と、悔しが
っている。
――――-ごはん
朝ごはん
キウイとりんご

昼ごはん
マルタイラーメン
大根もち
カクテキ

夜ごはん
煮鶏
キムチ
牛蒡の佃煮
大根葉の炒め物


