母が私のメガネを拭いている
手を出して
「ふいてあげる」とメガネを受け取った母の、
弱々しい眼差しと細い指先。
カメラはどこだろう。
わたしはベッドの傍で、ジェーンとシャルロットを見始めたところ。
メガネのレンズはタオルで拭くとかえって曇ってしまった。
自動再生されたこのドキュメンタリーはいつか見ようと思っていた
けれど、今だよと差し出されたように思った。
潮目が変わったような気がしている。
なんの潮目だろうか。
今夜ものぶちゃんはベッドの向こうで母を見守っている。
今日、母は、車椅子に乗った。
身を起こすことで起きる目眩と血圧の具合を確かめた。
看護師は汗ばんでいた。
椅子に腰掛けた母はさいしょ、クシャクシャにされた紙人形のよう
にシワが縦に刻まれて、困惑した目玉がぎろぎろしていた。
けれど、時が経つにつれて命が満ちてしっかり生きている人になった。
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