12月13日
ラインを面倒くさがるようになってきた。
「やってみたら」とは私ももう言わない。面倒になることはたぶ
ん自然のことだろうから。
それにベッドに横たわっている時間も長くなってきたように思う。
1日に何度かオンラインにする。就寝前の19時30分から30
分は必ずする。
母は薄っすら目を開けて「夢を見ていた」と言った。
隣の(と、壁を指差した)から人が来て、みんな何もかも持って
行かれた、と笑っている。時々強く出るもの取られ妄想だけれど、
今日は軽そう。
わたしはご飯を食べていたから、器を手に持ってスープをすする
と、「あら、懐かしいわね、その茶碗」とベッドから少し身を起
こしたから、びっくりした。内心「まずい」と思い、画面越しで
もわかるんだなあと感心もした。
母は「ほら、ほんとうに持っていっているでしょう」とすこし
責めるような口調になった。
「うん。これ、銀座の黒田陶苑で買って、おかあさんにプレゼン
トしたもんね。この頃使ってなかったみたいだし、持って帰って
きた」とひやひやしながら言うと「いいわよ、もう置くところな
いし。ところで今何時?」と聞いてきた。「もう少しで8時」と言
うと「こんなに寝て、だらしないわね」と起き出して、どうやら、
朝と夕方を間違えているよう。
病院で経験することは少ないから、母は同じことをなん度も話す。
お見舞いに来たホテルの元支配人が持ってきてくれた手作りのり
んごジュースがおいしいこと、彼は今ダンスを教えていること。
澄川にできた帽子屋に行くのを楽しみにしているとも言った。
帽子屋の情報は新聞からのよう。雑誌類や新聞は自由に持ってこ
られるから、一日読み物をしているようだ。
そして、わたしが送ったドラねこの絵を手に持って見せて笑って、
「にゃーご、にゃーご」とふざけた。
看護師さんが熱を測りにきて、トイレに連れて行ってくれる。
画面越しに手を振る。
おやすみなさい、またね。
看護師さんも振ってくれる。マスクの上の目が笑っている。

