
二月になった。
まずは掃除。
玄関の扉が氷のように冷たくて、学校の掃除で雑巾が
凍ったことを思い出した。
パリッと凍ります、北海道では。
そういえば、うろおぼえだけれどヴェンダースの「パ
ーフェクトデイズ」の物語のヒントに、レナード・コ
ーエンから禅宗の僧侶時代(と、聞いてものすごく驚
いた)の話を聞いた、掃除は修行だと言っていた、と
ヴェンダースは思い出し笑いをしていたのだけれど(
そこは、笑うところなんだな)妙に納得した。同じこ
との繰り返し果てしなく。けれど同じことの繰り返し
ではなく果てしなく。
まだまだポーチは寒くて白菜漬は清潔な味がする。こ
れは何の味なんだろうなあ、冷風の味?冷蔵庫の冷気
とは違う味。
朝ごはんは納豆卵とポトフ。ポトフの干肉を食べ尽く
して、代わりにお豆腐を入れて細火にかけた。お豆腐
はスープにうすあまい豆の味を広げて、すっかり和の
味に変えて、侮れないな。

肩ロースの塊に塩をすり込んで、オーブンに入れる。
焼き上がりが近くなると、チリチリ油が跳ねている音が
聞こえてくる。
(肩ロース500gにお塩は小さじ半分くらい。時間は
45分くらい200℃で)
今日のつけ汁は、この間シークワーサーのジャムを作っ
た時にでた果汁とみりんと醤油。
焼き上がりの熱いうちに浸して上下を返します。
これで今晩のおかずは安泰。味付き卵もできている。
もやしのナムルは頼んで出かけた。

卓也さんのナムルの味は静かだ。
太白ごま油が見つからなくて、米油で仕上げたと言っ
た。ふつうのごま油でいいんだよと言うと、それだと
くどいと思ったらしい。もやしのヒゲまで取ってあっ
て、つるんとしている。
晩御飯は
ローストポーク 味付けたまご ポトフの残り
お母さんは小さな画面の向こうでケラケラ笑っている。
隣の病室にもお友達ができて、おみかんをもらったと
言った。そして、スリッパの先が引っかかって転んだ
のよ、と思い出しては少女の塔に笑っている。そして
さらに「あー。今日は笑った」と言った。
おはよう
うさぎさん
赤いお耳がおひさまに透けていますよ
今日のお弁当は玄米です
おかずは・・・
たぶん梅酢風味のササミの唐揚げ
が入ることになると思います


1月31日
一ヶ月くらい前に賞味期限が切れている糸蒟蒻を箱の
底に見つけました。今日のお弁当のおかずにしよう。
揚げるといいらしいんです、炒めるよりチリチリにな
って歯応えが出て味もよく沁みるそうです。ササミは
鍋の底に残った油で揚げ焼きにしました。
さらっと煮た大根がみずみずしさがあふれるような美
味しさです。無水鍋でひたひたよりも少ないお水とお
酒だけで煮て、大根の硬さが残っているところにお塩
をふり、米油を掛け回して蓋を閉じ火を止め、鍋の熱
が静かになるまでそのまま置いておきます。
このごろ水の力に頼ることが多くなりました。

1月は長かったなあ。
元日は台所に立って、二日はたかちゃんがお年始にき
てくださり、3、4日は初詣と札幌に帰る用意、5日
はKちゃんの新居で新年会、翌日から札幌に10日ば
かり滞在して、後半は東京。とにかく身の回りを整え
て、とっ散らかった自分も整えて、掃除や料理をして
いる間中、土井善晴とクリス智子の哲学するポッドキ
ャストをよく聞きました。
ドラマは京都人の密かな愉しみとテミスの不確かな法
廷がおもしろく、プロフェッショナル仕事の流儀や映
像の世紀バタフライエフェクトをみるようになり、そ
の分映画が減りました。
あ。村上隆と斉藤幸平の対談が面白かったなあ。

1月30日
ツンツン
何?
ほらあれ
先ゆく人のセロリである。
白いビニール袋から葉っぱがあふれてふさふさゆれている。
あんなふうに株で売っているところはどこだろう。聞きた
くてうずうずした。エスカレーターに乗ると目の前に葉っ
ぱが近づいてきた。ちょっと袋の中をのぞくとロマネスコ
の先っぽが見える。
えーっ。
マルエツではないなあ。旬八か中華屋の隣の角の店。
そのお方は2階のスーパーには寄らず上の階に昇って行
った。
買い物をしていると、あれ、さっきのセロリのお方。
横顔をチラリと見る。
(「あっ」)
「あの、すみません。その立派なセロリはどこでお求め
になったのですか?」
ふりかえるとそのお方は横顔よりうんと美人で、白いモ
チ肌にニコッと笑顔が浮かぶ。
鈴が鳴るようなお声で、すごおおくわかりやすく道順を
教えてくださる。道を思い浮かべている横顔がまた素敵。
口の脇の小さなエクボがさらに笑顔を素敵にしていて、
感じいいなあと見惚れちゃう。
「今日初めて行って、わりと小さなお店。野菜と果物だ
けが並んでいてね、これは」とやや小さな声になり「1
98円!」と人差し 指が上がって「行ってらっしゃいま
せー」と朗らかにおっしゃる。
嬉しくって、いい人だったなー、美人だったなーと連呼
して、小さくスキップして、それで、忘れてしまった。
セロリの八百屋に行くの。
昼ごはん
朝に卓也さんはパンを焼き、わたしはスープを作り
食べすぎてお腹が空かず、インスタントラーメン。
一袋しかなかったし、お腹が空いてないから食べな
いつもりだったけれど、半分残してくれた。
もやし、塩炒め挽肉にラー油を馴染ませて担々麺風
ゆで卵、青ネギ
ラー油、天才!

夜はポトフ
これにセロリを入れたかったのだ。
卓也さんは「聞くと思わなかった」と言った。
「大丈夫だと思ったの」とわたしは言った。






























去年の紅葉はことにうつくしくて特に桜が。ずいぶん
長く楽しんで、冬らしい透徹した光がふりそそぐ風の
強い日にほとんど枝を離れた。
12月はまだ体力も気力もじゅうぶんではなくてリハ
ビリのような日々だったけれど、ふりかえって写真を
並べると、世の中は色に満ちてうつくしいことは変わ
らないのだなあ。
月のはじまりに蝿が弱り始めて、窓際でじっとしてい
た。なんとかしてカボチャの小皿にのせると汁を吸っ
ていた。このまま弱って死んでしまうのだろうと思っ
ていたけれど、力を取り戻したのか消えていた。
奥久慈の伊藤さんからたくさんの長ネギ、白菜、里芋
の類、とても助かった。家計も助かったけれど、卓也
さんの肺も助かった。銀杏やピーナッツもいただいて
、塩で炒り、味噌炒めにした。
札幌の食パンがおいしかったこと、VIRONのバケッ
トの完成度に唸って、香ばしさの研究をしたくなっ
た。
年末には茶の花を知った。
わたしはもう大丈夫だな。
進もー
進もー
と、頭でなっているこの歌はスタジオジブリ?

1月29日
さらに耳が遠くなってきた母とオンラインで話す時は、
わたしはほぼ聞き役で、母を見つめることになります。
今朝はスマートフォンを台所のタイルに立てかけてお弁
当を作りました。「まな板のトントンいう音っていいも
のねえ」と幸せそうに顔をほころばせて「あーん」と口
を開けます。わたしは細切りにした卵をお箸でつまんで
母の方に差し出します。「ヨイショってなによぉ」と喜
んでいます。えっ?と思ったのですが、ほんとうに小さ
な声で「ヨイショ」と呟いていました。
ええ?聞こえてる?
台所に立っていると母は安心するようなので、朝はこれ
でいこうと思います。
夕べのうちに解凍した鶏そぼろにいただきものの山椒の
実を散らし、錦糸卵をこんもり盛り付けます。
椎茸の旨煮は今日は細切りにします。
いつもは茶色のコンポジョンのお弁当ですが、緑、黄、
赤が配色されると気持ちが明るくなりました。
お弁当はいいなあ。
詰めることも、包むことも大好きです。
その喜びはほぼ本能に近いようにも(なんの本能だろ
うか!)思います。
人間が一枚の布に包まっているのも素敵だし。
お弁当を作っておくと、昼まで集中して物事をできる
ので好都合です。
お汁は、梅干しととろろこぶにお湯を注ぎます。

夜は中華風スープパスタのようなものを作りました。
適当にするとわりと成功します(この間、平野レミさ
んの特集で昔の映像を見たのですが、アナウンサーが
トマトの種は取らなくていいのですかと横から口を挟
むと「いいのよどうせ食べちゃうんだから」と手づか
みで大きなトマトをぐちゃあと潰し「料理なんて適当
でいいのよ適当で」と明るく笑っていて、いいなあと
思いました)。そう、その中華風スープパスタは、鶏
のスープにトマトを入れて沸騰してきたところに、地
粉を水でゆるくといた生地を(時間はおかない)箸の
先でつまみ、パッと箸を開くと一瞬短い板状になるの
で、その形が崩れないうちにスープに入れてゆきます、
ゆるい生地なのでふわふわしているし、時間を置いて
ないのでグルテンが発生していないし、平麺とも団子
ともいえない形が食べやすいし、とろみが出るので
寒い夜にはあたたまるし、これはよいものだと思いま
した。朝の時間のない時にもいいのではないかなあ。
あ。最後、卵でとじます。味付けは、塩。ナンプラー
でも合うと思います。夏なら少し酸味を加えて。
仕上げに山椒油やごま油、ラー油たらすと、香りが
グッと華やかになります。
パクチーも相性がよさそうです!

